なす栽培

専業農家の栽培テク。家庭菜園でも役立ちます。

ナス青枯病の対策-まとめ

ポイント!

  • 発病株は早めに畑の外へ出す
  • 被害が大きい場合は土壌消毒が必要
  • 抵抗性台木を使用した接木苗の利用
  • 緑肥や籾殻、米ぬか、稲わらなど有機物施用
  • 敷きワラや白、黒マルチで地温を下げる。

どんな病害虫でも、病原体や害虫の密度が一定数を超えると被害が顕在化します。
ハダニやオオタバコガ、うどんこ病などの防除が遅れたときは、特に実感させられます。
青枯病は、抵抗性台木を利用すると症状が現れないので、病害を克服した気になりますが、気象条件等により激発し大打撃を被る危険性は常にあるのです。


なす青枯病の発病と病原菌

なす青枯病は、最初に先端の葉が水分を失ってしおれます。
2~3日間は日中は、しおれても夜間や曇雨天の日には回復しますが、その後回復しなくなり株全体が、しおれ最後は枯死します。
地上部からハサミなどで感染した場合は、部分的に症状が現れるので他の病害との誤認に注意しましょう。

青枯病細菌(Ralstonia solanacearum / ラルストニア・ソラナセラム)を、はじめとした細菌類は、クオラム・センシング というメカニズムを持っています。
菌数が少なく菌密度が低いうちは、毒性物質を作らずに閾値(ある一定の値)を超えると、病原性を一斉に発現させて総攻撃にうつる省エネ戦略です。
クオラム・センシングを制御する物質をクオルモンと呼び、青枯病菌では3-ヒドロキシパルミチン酸メチルエステル(3-OH PAME)が、クオルモンである事が判明しています。

根の傷などから維管束に侵入した青枯病菌の数が増え、クオルモン濃度が閾値(5nM)を超えると病原性を発現させ、セルロース分解物質や細胞外多糖 (EPS)の生産を始めます。
大量のEPSと菌体により菌泥と言われるネバネバ物質がつくられ、維管束の通水を悪化させるので萎凋症状があらわれます。

今後、研究が進めば、3-OH PAMEを製造または分解する細菌を利用して病害の発現を抑える事(クオラム・クエンチング)が可能になるとされています。
参考:新潟植防だより114号

なす青枯病の発病を抑える方法

青枯病菌は特殊な存在ではありません。常にどこにでもいる微生物の一種です。
一旦発病すると長期間菌数を維持するので総合的な対策が必要になります。

病原菌の数を制御する

1.)発病株の処理
耕作中に発病を確認した株は、二次感染を防ぐため枝葉を切除して畑の外で焼却や埋設で処分します。残した下部は収穫終了後、できるだけ根を切らずに抜き取り畑の外で焼却か埋設します。

2.)土壌消毒
クロルピクリンやガスタードなど薬剤の他。水蒸気や太陽熱湛水処理、燻蒸作物や土壌還元法などが薬剤に頼らない方法もあります。
いずれの方法も処理可能な深さに限度があり完全殺菌は困難です。
過度に期待せず「土壌消毒 は、一時的に菌密度を下げる効果がある。」程度に考えるのが無難でしょう。1年目は良くても2年目以降に多発する事もあるので、費用や労力が掛かりますが、毎作取組めば効果が高いと思います。
無菌状態となった畑では、少しの病原菌で甚大な被害がでる可能性があるので注意が必要です。病原菌は、地下1mまで生存可能で、薬剤や熱が浸透した上層部は殺菌できても、深い部分には残っているので処理後の栽培時には、浅耕にして土の移動を最小限に抑えましょう。
未処理部分から雨水で病原菌が流入してくる可能性があるので排水対策は重要です。

3.)有機物の施用
薬剤等による土壌消毒は、畑の中の病原菌と有用な微生物を、区別無く死滅させる事により病害を防ぐ考え方です。病原菌のみを選択的に処理することは出来ません。
反対に有機物の施用は、有用な微生物に餌と棲家を与えて増殖させ、病原菌を相対的に減少させ発病を抑える考え方です。
有機物の種類が増えると微生物の種類や数が増えます。生物相が豊かな土壌は、静菌作用が高く病害が出にくいと言われます。
身近にある安価で容易に入手できる材料で十分です。緑肥、稲わら、モミ殻、米ぬか、鶏糞、豚ふんなど多種多様な材料を、漢方的に継続して施用する事が有効です。
有機物を一度に大量投入すると障害が現れる場合もあるので、収穫後から元肥までの間に施用し、耕うんして土壌と混和し分解を促します。その他、栽培期間中に通路やうね面に少量づつ継続して施用する方法もあります。
参考:微生物利用生態農法

4.)その他耕種的な方法
1.マルチ、敷きワラで地温を下げる。
地温25~30℃の高温が病原菌の活動に適しているので、地温を下げることは発病抑制に効果的です。敷ワラや敷草、黒や白のビニールマルチで畦を覆い地温上昇を防ぎましょう。

2.高うねにする。
病原菌は、土壌の深い部分に生息していますが、地温上昇と共に上層にある植物の根域まで侵攻して病害を与えます。
菌の生息域と植物の根域を分断したり、距離をひろげる事は予防に効果的で、浅く耕して耕盤を形成する事や高くうねを盛ることが有効です。

3.排水をよくする。
病原菌は、水に乗って移動するので、排水対策を行いましょう。
降雨などで長時間にわたり水が滞留すると根が弱ります。感染の危険が増すので3時間以上の湛水は避けましょう。

植物体の抵抗力を高める

1.)接木苗の利用
青枯病対策として一般的なのが抵抗性台木を使った接木苗の利用です。
台木の茎部分が、浄水器のスポンジフィルターのように働き、病原菌が穂木部分に上昇するのを防ぎます。フィルターが長いほど浄水効果が高くなるのと同じく、台木の茎も長いほど抵抗力が高まります。
近年では、台木部分を長くした高接木苗が注目されています。
なす高接木苗高接木苗 台木10cm

台木の選定は、病害の発生状況や作型 を考慮して決めましょう。
青枯病には5種類の菌群があり、未対応の台木を使うと発病してしまうので普及センター等に問い合わせ、当該地域内の菌群を確認しましょう。
赤なす⇒トナシム台太郎 の順で抵抗性が高くなりますが、台太郎には半身萎凋病 の抵抗性が無いので、同病が多発する畑ではご注意ください。
いずれの台木も菌密度や気象条件により発病する事があるので、日頃から良く観察して発病を確認したら速やかに対応しましょう。

2.)バリダシン液剤5の利用
バリダシン液剤5は、植付け後のナスに使える青枯病の薬剤です。
定期的に(10~14日間隔)散布することで青枯病に対する抵抗性を高める効果があります。
散布後、茎葉に吸収され、導管内の細菌の増殖や細胞外多糖(EPS)生産を抑制します。
夏秋栽培は、高温期の栽培になるので活着の1週間後から500倍で散布します。液剤なので果実等は汚れないので安心です。
効果としては、7~14日ほど発病を遅延させる事が確認されています。
お盆前後の発病が多いので1~2週間遅延できれば、9月に近くなり地温や気温も下がるので発病株が減ったり症状が軽くなったりする可能性もあります。
未処理のままならば発病していた株が、処理した事により1~2週間長く収穫できたとしたら経済的にも効果が大きいと言えます。
予防薬は効果判定が難しい場面が多いと思いますが、青枯病の特効薬がない現状では、総合的な防除として必要です。過去に激発した事のある畑で栽培を継続するならば全ての手段を使う必要があるでしょう。
バリダシン液剤5は、なす褐色斑点病や褐斑病に高い防除効果を示すので、発生が見られる畑では同時防除が可能です。

3.)研究開発中の技術
バクテリオファージの利用
自然界には細菌に感染して死滅させるウイルス「バクテリオファージ」が存在します。
青枯病菌に特異的に感染する複数のバクテリオファージの単離は既に成功していて、将来的には製剤化し散布することで、青枯病の防除や予防が可能になると言われています。
参考:青枯病ワクチン開発