なす青枯病と半身萎凋病に最強なナス苗にする
- 半身萎凋病に強い「トナシム」は青枯病に少し弱い。
- 青枯病に強い「台太郎」は半身萎凋病に弱い。
- トナシムの根で半身萎凋病を防ぎ、台太郎の茎で青枯病を防ぐ。
- 台木の長さを確保しながら、太さを合わせる事が必要。
一旦発生すると防除方法が限られ、壊滅的な被害をもたらす青枯病
はナス栽培の大敵です。
近年の温暖化傾向で青枯病による被害は拡大しています。
もう一つ、なすの重大な土壌病害に半身萎凋病
があります。
どちらも栽培期間中の防除が不可能です。
対策としては...
抵抗性台木の利用
なす台木
は作型
、草勢
の強弱、病害への抵抗性
などを考慮して選択します。
耐病VF、トレロ、茄子の力、カレヘンなどたくさんありますが、
半身萎凋病(V)が多発し、青枯病(B)も発生する畑には「トナシム
」がおすすめ。
半身萎凋病に強い抵抗性があり青枯病にも強い台木です。
トナシム台木を使っても青枯病
が多発する畑には「台太郎」を使います。
現在登録されている台木品種のなかで一番、青枯病に強いと言われています。
残念ながら台太郎には半身萎凋病
の抵抗性
がありません。
青枯病が多発する畑では、台木の抵抗性で半身萎凋病を抑える事ができず、発生した場合は収穫を諦めざるを得ないのが現状です。
半身萎凋病 | ⇒ | トナシム 台木導入 | ⇒ | 病害克服 良品多収 | ||
⇓ | ||||||
トナシム 青枯病多発 | ⇒ | 台太郎 台木導入 | ⇒ | 青枯病を抑えるが 半身萎凋病が発生 |
台太郎台木の接木苗 に半身萎凋病抵抗性を持たせるためトマト台木を使ったナス接木苗を試みましたが、トマト台木を使ったナスでは病害に強くなっても不良果が多く、営利栽培には不向きである事が分かりました。
同じナス台木ならば不良果の発生もなく、各病害に抵抗性をもつ接木苗になるのではないかと考案されたのが「なす多段接木 」です。
なす台木は、根の部分で半身萎凋病菌の侵攻を防ぎ、茎の部分で青枯病細菌を防ぎます。
根部分トナシム ⇒ 中間台木 台太郎 ⇒ 穂木
梵天丸の順に接木します。
種子や培土などの資材費や接木作業の手間、養生期の歩留まりなど課題は多くありますが、結果が良ければ取り組みたい技術です。
種まき~接木まで
接木
作業は穂木
の播種後35~40日が適期。
台太郎は穂木の5日前、トナシムは、種子が小さく生育が遅いので14日前にまきます。
発芽の遅いトルバム系でも種苗会社で発芽促進処理(ハイダッシュ処理)を行っているので1週間前後で発芽します。
処理済みの種子には、ジベレリン
による休眠打破
は必要ありません。
前夜から10~12時間程度ぬるま湯に浸水します。
発芽まで地温30℃くらいで管理。
その後も地温、気温を高め。土壌水分を多めにすることで茎葉の伸長を促します。
青枯病を防ぐには、茎の長さが重要なので中間台の台太郎は茎長5cmを目標に育苗します。
茎がフィルターの役目をして病原細菌が上昇するのを防ぐので、長いほど抵抗性が高まります。
穂木は品種にもよりますが発芽後は温度、水分とも控えめにして硬くしまった苗にします。
台木も接木の1週間前から温度水分を控えて硬く仕上げます。
作業日程と手順
トナシム播種 | 2月11日 | -14日 |
台 太 郎播種 | 2月20日 | -5日 |
梵天丸(穂木)播種 | 2月25日 | 0日 |
多 段 接 木 | 4月 5日 | 39日 |
鉢 上 げ | 4月13日 | 接木後 8日 |
定 植 | 5月15日 | 接木後40日 |
128穴トレーに播種 接木支持具は ジョインホルダー2.1または2.4 鉢上げは9cmポット使用
トナシム台木 種まき後53日
台太郎台木 種まき後44日
穂木 梵天丸 種まき後39日
1.) 中間台の台太郎を斜めにカット
2.) 穂木を斜めにカット
3.) 台太郎と穂木をジョインホルダーで接合
4.) トナシムを斜めカット
5.) 中間台と根部のトナシム接合
6.) セルトレーに戻して倒伏防止に竹串で支柱をします。
1穴開けて千鳥に置くことで徒長を防ぎます。
慣行より、しおれが強い感じがするので湿度を高く保つ必要があり、活着まで時間がかかるようです。 接木作業はトマト幼苗接木接木後の養生管理は接木養生管理をご覧下さい。
今回の活着率は50~60%と満足できるものではありませんでした。
改善のポイントは、トナシムと台太郎の接合部分だと思います。
台太郎をできるだけ伸長させ地際から離れた組織の柔らかい部分で接合できれば、活着率が上がるような気がしました。